2012年7月8日日曜日

寝不足のとき、イライラする理由

学会発表でまだちゃんとした論文になってないんですが。
先日の日本睡眠学会で発表されたので第一報ということで。


寝不足で不安になったりイライラしたりするのは、脳が不快なものに反応しやすくなる一方、抑制が利きにくくなるのが原因であることを国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長らが突き止めた。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120627-OYT1T00845.htm





研究チームは20~31歳の男性14人を対象に、1日4時間ないし8時間の睡眠を5日間続け、最終日に脳の活動を機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で調べました。
つまり、おなじ人を対象に、通常睡眠と寝不足の状態を作って、それぞれの脳の血流の状態を比較した、ってことですね。


実験の対象者に「恐怖の表情」の画像を見せる*と、寝不足の時は不安や緊張などに反応する脳の扁桃体の活動が8時間睡眠時に比べて活発になっていました。
一方、幸せな表情の画像を見せた場合には違いはありませんでした。
また、寝不足では大脳の皮質の活動が扁桃体と同調せず、不安や緊張への抑制が利きにくいことがわかりました。さらに、抑制が利きにくくなる人ほど、心理テストで不安・緊張や混乱する度合いが高いことがわかりました。

扁桃体は情動と記憶・学習と関連する部位で、特にストレスと強い関わりがあります。
ストレスや恐怖を感じると活性化したり、ストレスにさらされ続けたりすると大きくなることなどから、精神疾患やうつとも関与しているといわれています。


今回の報告では、寝不足の時に扁桃体が活性化していた、つまり恐怖やストレスに対する反応が強くなっていたことを示しています。
さらに、感情のバランスを取るために活動している大脳皮質の活動も抑えられていることから、脳の機能はさらにストレスに弱くなります。
寝不足になるとイライラしたり、怒りっぽくなったり、集中できなくなるというのは、誰しも経験的に知っていることですが、今回の発表はこの現象が脳科学的に裏付けるものといえます。


かなり古くから、うつの原因の一つに寝不足が上げられていますが、今回の報告はそれを裏付けるとともに、フラットな状態で生活しようと思ったら、やっぱり睡眠が大事なんだなーということを示したものだと思います。

まあ、そう思うがままに寝てらんねえから寝不足になるんだけどな! 余裕!


*心理学の実験でよくやる手法。怖がってる人の写真を見せると、共感によって不快感や恐怖感を感じる、という仕組みを利用して反応を調べる。

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