2012年4月17日火曜日

ネコ(,,゚Д゚)<文明はわしが育てた

という学説があるですよ。
いや、マジでマジで。

古来、日本でも「招き猫」をはじめとしてネコを幸運や繁栄のシンボルとする話は少なくないし、海外でも「ネコの夢は吉」って国は数多く、猫を神としてあがめてた古代エジプトみたいな国もあります。

「ネコのかわいらしさで癒されたから」とか「身近なネコを神聖なもの/幸運のシンボルとして捉えた」なんて解釈もあれば、もうちょっと文化人類学的に「穀物を食い荒らすネズミを捕るネコを繁栄のシンボルとした」なんて解釈をする向きもあるんですが、「ネコが文明を発達させた」って学説に関してはもうちょっと脳科学的な理屈付けがされてたりします。

きょうはそんなお話。


それでは、ネコがいかにして文明を発達させたのか?
それには、ネコに寄生する原虫である”トキソプラズマ”が関係しています。

原虫というのは「単細胞生物の中でも動物的な性質を持つ病原体となる生物」なんて分類がなされてますが、いわゆる菌類よりもうちょっと動物に近い、ミドリムシとかのようなものだと思ってもらえばいいかと思います。

あんまり聞かない名前ですが、実は全人類の1/3(日本人の約10%)はトキソプラズマに感染しているとも言われているほどありふれた存在です。
とはいえ、子供や老人、AIDS患者、移植手術のあとなど、免疫力が低い患者では一気に重症化し、トキソプラズマ脳症やなどによって、時には死に至ることさえあります。……と言っても健康状態であれば感染してもほとんど症状が出ないか、出てもしばらくの間風邪っぽい症状が出るといった程度のもので、そう危険はないものと考えられていますが。

さて、このトキソプラズマですが、ネコはもちろん、人間やネズミにも感染します。
そして、多くの研究から、「トキソプラズマに感染したネズミがネコを恐れなくなる」ことがわかっています。

通常、ネズミはネコの尿のにおいを嗅ぐとそこから遠ざかろうとするのですが、トキソプラズマに感染したネズミはむしろ尿のにおいに引き寄せられるのだそうです。
尿のにおいに引き寄せられたネズミは、当然ネコに食べられる確率が上がりますから、トキソプラズマから見ればネコへの感染拡大がはかれるわけで、そういう視点で見れば「繁殖のためにネズミを操っている」という事もできるかも知れません。

では、トキソプラズマはどのようにしてネズミの行動をコントロールしているのか?
この点については、実は未だはっきりした答えはありません。

ただ、近年の遺伝子的解析により、トキソプラズマはその遺伝子の中に「ドーパミンの合成に関与する遺伝子」を含んでいることが明らかになりました。
つまり、トキソプラズマが感染・増殖すると、ドーパミンが合成されるということです。

ご存じのように、ドーパミンというのは中枢神経系で神経を興奮させている物質で、覚醒剤の投与で分泌量が増えたりとか、分泌量と統合失調症の関係が言われている物質です。

したがって、トキソプラズマに感染したネズミではドーパミン分泌量が上がり、結果感染ネズミたちは『無謀な』行動に出ているのではないか、と考えられています。


で、実は人間でも同じことが起っているのでは、という報告がここ数年増えています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=human%20dopamin%20toxisoplasma
上のページを見ると、「トキソプラズマと人の行動」や「トキソプラズマと精神病」なんて論文が出てますね。

トキソプラズマ感染の影響を調べた研究によれば、
男性は反社会的に、女性は社交的になる
■統合失調症や双極性障害にかかりやすくなる
男性はリスクを恐れなくなる・集中力散漫・規則破り・危険行為・独断的・反社会的・猜疑的・嫉妬深い・女性に好ましくない
■女性は社交的・ふしだら・男性にもてる
などといった傾向が認められているそうです。

上に挙げられている項目は、社会を維持する上ではマイナスに機能する可能性が高いでしょうが、一方で新たな世界を切りひらくような場面ではプラスに機能する場合もあるでしょう。
たとえば男性の「リスクを恐れなくなる」性質などは、戦いや競争という場面ではプラスに働く可能性もあります。
実際、スタンフォード大学のパトリック・ハウス博士はサッカーワールドカップでの各国の勝率と、各国でのトキソプラズマ感染率に相関関係がみられるという研究結果を発表しています(もっとも、イギリスやイタリアなどのように感染率が低くても勝率の高い国もありますので、この研究に関してはもう少し検討が必要かも)

また、ドーパミンには覚醒剤だ統合失調症だといった病的な面だけでなく、学習や活動意欲に重要な役割を果たす『報酬系』にも大きく関わっています。

「物事が上手くいってうれしい」とか「誉められてうれしい」なんてときには、脳はドーパミンを放出し、快感を感じさせます。
高等生物はこうしたドーパミンによる快感を報酬として、仕事をしたり、学習の意欲を継続したりしています。
つまり、ドーパミンが豊富に分泌されるようになることで、報酬系が活発に働くようになり、それが文明の発達に貢献している可能性もあるわけです。
実際、トキソプラズマの有無にかかわらず、ドーパミン分泌が豊富な人は好奇心旺盛で、やる気に満ちている一方で、飽きっぽい傾向があるそうです。
逆に、分泌に乏しい人は活動意欲が低下しがちで、引きこもったり鬱状態になりやすかったりということもあるようですから、そういう意味ではトキソプラズマによるドーパミンの分泌は社会の発展にプラスとなっていたのかも知れません。

「飼い犬は飼い主を神と信じ、飼いネコは自分を飼い主の神だと信じる」なんて言葉があります。
古くは新石器時代から飼われてきたと言われる猫たち。
ネズミを捕る以外にも文明に貢献してきたのだとしたら、本人たちはそんな態度も当然のことだと思っているのかもね。

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