2012年3月24日土曜日

曲がった先を見通します

MITの研究者グループが「角を曲がった先」を写せる技術を完成させたってお話。

Recovering three-dimensional shape around a corner using ultrafast time-of-flight imaging
Andreas Velten, Thomas Willwacher, Otkrist Gupta, Ashok Veeraraghavan, Moungi G. Bawendi & Ramesh Raskar

http://www.nature.com/ncomms/journal/v3/n3/full/ncomms1747.html

















壁の向こうに隠れた上の写真の人形が、下の画像みたいに写せたとのこと。

ちょっと崩れてる部分はあるけど、ちゃんと人型であることははっきりわかる。

では、この「回り込み」写真はどのように撮られたのか?


原理としてはあまり難しいことはなく、カメラのそばからごく短い間隔でレーザーを照射(フェムト秒レーザー)を発射して突き当たりの壁に当て、その反射光が対象物(ここでは壁の影に隠れた人形)に当たって帰ってくる反射光をカメラで捕らえ、反射の度合いや光の濃淡から3D画像を再構成する、というもの。

遠いところにあるものの反射光は遅く、近くのは早く帰ってくるという、ごく当たり前の現象を利用しているわけだ。

潜水艦やイルカ・クジラなんかがやってるアクティブ・ソナーと同じようなことを光でやってると考えれば、原理的には全く難しいことはない。


とはいえ、それを実現するのは非常に難しい。

だって、音は秒速340m程度だけど、光は約30万kmもあるんだよ? そんな早さで反射する光から、壁の影の数センチの差を割り出すなんて!

しかも今回のシステムで言えば、レーザー発振器→壁→壁に隠れたもの→壁という、反射の反射の反射光を捕らえて3D像を構築しようってんだから、その難しさは桁違いだ。

これを実現するために、MITの研究者たちはレーザーを非常に短時間だけ打ち出せるレーザー発振器(フェムト秒レーザーのフェムトってのは10の-15乗、つまり千兆分の1って意味だ)と、光分解能2ピコ秒(ピコ=1兆分の1)、つまり1秒を5000億コマに分けて捉えられる高性能センサーを用意した。

レーザーは何度か角度や位置を変えて発射され、壁に反射してセンサーに飛んできた順にデータとして蓄積される。こうして集められたデータは、今回新たに開発されたプログラムで解析され、最終的に先にあげたような3D画像として再構築される。

説明動画が英語わからない人にもわかりやすく作られてておもしろいので掲載。
壁の向こう側にあるマネキンが画像として再構成されるまでがよくわかる動画です。
金かかってるなー。




なお、この結果はNature Communications に掲載予定だそうで。

研究チームのリーダー Ramesh Raskarによれば、「災害時のレスキューや警察、ナビゲーションシステムなどで、視界が通らない室内や曲がり角の様子や安全を探るのに使えるのではないか」とのこと。

現状では超高価な機器やものすごい量の計算を迅速に行うコンピュータが必要だし、そもそも反射させる壁がないとダメとか明るすぎるところではレーザー捉えられねえんじゃね? とかいろいろ問題がありそうなので、実現はちょっと難しいかもだけど、いろいろ夢が広がるシステムだよなー。

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