2011年10月4日火曜日

「走れば脳が若返る」新たな証拠

産総研ニュースより。

記憶を司る海馬の「アストロサイト細胞」が作るタンパクWnt3が神経細胞が増殖する起点になることは以前から知られていた。

そのアストロサイト細胞が、老化するほどWnt3を作る能力が低下すること、そして、ストレスにならない程度の軽い運動(ランニング)でWnt3を作る能力が向上し、新しく生み出される神経細胞の数が増加することなどがわかった。
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20110808/nr20110808.html





アストロサイトってのは脳で神経細胞の足場になる層を作ってる細胞。
昔は単なる「穴埋め」だと思われてた(ために、「脳は10%しか使われていない」なんて都市伝説が生まれたそうな)けど、最近の研究で神経細胞の分化やら増殖やらに関わってることがわかってきている。



で、この研究グループは以前、このアストロサイトが作るWnt3ってタンパクが、神経細胞が伸びていくスタート地点になることを見つけてた。
神経細胞は他の細胞と分化の仕方がちょっと違うんだけど、そのスイッチを入れてるのがWnt3だと解明したんだね。

んで、今回の研究はその続編。
このWnt3ができる条件とか、その役割を調べようということで、マウスの海馬からアストロサイトを取り出し、培養してWnt3を作る様子を調べた。

すると、老齢マウスのアストロサイトは若いマウスの1/30ほどしかWnt3が作れないことがわかった。

先も述べた様に、Wnt3てのは神経細胞が分化する起点となるタンパクだ。コレが少なくなれば、当然記憶力なんかにも影響が出るだろう。
つまり、年を取って記憶力が落ちるという現象は、このWnt3が原因の一つだとわかったわけだ。

さらに、老齢マウスにストレスにならない程度の運動(ジョギングに相当)を行わせてみたところ、Wnt3の産生能力が大幅に増加したという。
そして、Wnt3の増加に伴い、神経分化も活発になっていることが明らかになった。

これまで、神経細胞の分化は神経幹細胞がやってるんじゃないかとか、他の部分の作った化学物質がスイッチになってるんじゃないかなどといわれていたんだけど、今回の研究でアストロサイトが神経の新生を制御している可能性が明らかになった。
さらに、運動が神経の新生を上昇させる、Wnt3がそのシグナル物質であるなどということがわかったことから、神経疾患や脳の損傷、精神疾患なんかに対して、Wnt3やその類縁タンパクを使った治療法を見つけるきっかけになるかも知れない。

個人的には「運動が海馬細胞の分化を促進する」というエビデンスがまた一つ見つかったのがうれしい。
こういうニュースが増えてくれれば、書いた本の続編が出せることになったときにネタに困らずに済むってもんですよ、ええw




実はこの記事が出たのが8月で、ちょうど「仕事に効く~」の追い込みに入ってるとこだったんで、この話も盛り込もうと思って原稿まで書いてたんだけど、ご高閲の時間切れであえなくボツに。
もったいねー。

ということでリサイクルしてみたw

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