2011年11月15日火曜日

高血圧の薬でPTSDを治そう!

ジョンズホプキンス大の研究グループが、マウス扁桃体(恐怖などの処理と記憶処理を行ってる部位)から特定のタンパク除去することで、恐怖の記憶の消去に成功した。
将来、PTSD患者の治療が可能になるかも、というお話、


恐怖って奴はかなり原始的な感情らしく、いろんな生物で恐怖や危険に対する記憶機構って奴が確認されている。まあ、そりゃそうだよね。危険なものを覚えてそれを怖がり、避けるようにならなきゃ、その種は死に絶えちゃうだろうもんなあ。

で、ネズミなんかのそこそこ高等な脳を持つ生き物は、こういう「恐怖」の記憶を扁桃体って部分で行っている。
より正確に言えば、扁桃体は情動を司っているといわれている。つまり、物事を「好き」とか「いい」とか思うような心の動きはここで行われているといわれており、ここから出る「好き」とか「嫌い」って信号が海馬と関わり合い、長期記憶と関わっていると考えられている。
好きな教科の勉強ははかどる、とかイヤな先生に勉強教わってもなかなか身につかないとかってことは、もしかしたらこのへんの作用が関わっているのかもしれないね。




さて、この扁桃体だけど、精神医学的には「恐怖条件付け」なんていう、いわゆる”条件反射”の一種と深く関わっていることがわかっている。 
つまり、この部分を壊すと、痛い目を見るとか怖い思いをしたときの行動や環境を記憶する能力が低下することが、マウスでもヒトでも確かめられている。

この「痛い目」、つまり「恐怖」や「衝撃的な出来事」が大きいとき、いわゆるPTSDとか心理的トラウマなんて呼ばれる状態を引き起こすわけだけど、このすごく長期にわたる記憶がどのような仕組みで行われているかはよくわかっていなかった。

そこでヒューガニル博士らは、恐怖を与える前と後のマウスの扁桃体のタンパクを比較し、詳細に解析することで、恐怖刺激の後に「カルシウム透過性AMPA-グルタミン酸受容体(calcium-permeable AMPARs)」というタンパクが、恐怖刺激から数時間で増加をはじめ、24時間目にピークに達し、48時間後に除去されることを見いだした。

さらに、このタンパクを除去しているのが神経細胞内にあるGluA1であること、そしてその除去にはGluA1の化学修飾が必要であることを明らかにした。
つまり、GluA1を化学修飾する薬剤があれば、calcium-permeable AMPARsを取り除くことが可能となるということだ。

そして、高血圧性の狭心症患者に用いられるプロプラノロールという薬がその作用を持っていることがわかっている。
もともと、プロプラノールというのはβ遮断薬といわれるタイプの心臓の薬で、アドレナリンの作用を弱めて心臓をゆっくり動かすように仕向ける薬なんだけど、副作用に「気分が沈む」とかの精神作用のほか、記憶障害が起きるあたりから研究がすすめられてたみたい。

博士らは、すでにPTSDに効果があることがわかっている行動療法に”恐怖を記憶させる”タンパクの消去を促進するプロプラノロールを組み合わせることで、PTSD をより効率よく解消することができると期待している。

実際のところ、湾岸戦争みたいな戦争経験者や犯罪被害者なんかがPTSDで苦しんでるなんて話もよく聞くので、もっとこういう研究が進むといいねえ。
もしかしたらうつなんかの治療にも一役買うかもしれないしね。 



JOHNS HOPKINS RESEARCHERS DISCOVER HOW TO ERASE MEMORY

http://www.hopkinsmedicine.org/news/media/releases/johns_hopkins_researchers_discover_how_to_erase_memory





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